テキーラの製造工程を学ぶ|収穫から熟成までの全過程ARTICLE

テキーラの製造工程を学ぶ|収穫から熟成までの全過程

2025.04.11
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テキーラの製造工程

テキーラの製造工程を学ぶ|収穫から熟成までの全過程

目次

  1. テキーラとは何か?製造工程を知る前に
  2. アガベの収穫(ハーベスト)|職人ヒマドールの技
  3. アガベの加熱と搾汁|風味を引き出す大切な工程
  4. 発酵|自然の力が生み出すアルコール
  5. 蒸留|テキーラの輪郭を決める2段階工程
  6. 熟成|味と香りを深めるバレルの魔法
  7. 製造工程によるテキーラの種類の違い
  8. テキーラ工場を実際に訪れた感想
  9. まとめ|製造工程を知るとテキーラはもっと美味しい
  10. 関連記事リンク

1. テキーラとは何か?製造工程を知る前に

テキーラは、メキシコのハリスコ州を中心とした限られた地域で、ブルーアガベ(アガベ・テキラーナ・ウェバー種)から作られる蒸留酒です。

「テキーラの製造工程を学ぶ」前に知っておきたいのが、テキーラはワインやウイスキーのように生産方法と原料の品質が味を大きく左右するということ。つまり、どう作られるかを知ることが、より美味しく味わう近道なのです。

この記事では、アガベの収穫(ハーベスト)から始まり、加熱・搾汁・発酵・蒸留・熟成という工程を順を追って詳しくご紹介します。

2. アガベの収穫(ハーベスト)|職人ヒマドールの技

テキーラの製造工程は、「アガベの収穫」から始まります。

ブルーアガベは約7〜10年かけて成熟し、糖度が十分に高くなった段階で収穫されます。収穫を担当する職人は「ヒマドール」と呼ばれ、熟練の技で鋭いクワ「コア」で葉を落とし、中心部分の”ピニャ”(球根)だけを残します。

このピニャが、テキーラの元になる糖分を多く含んでいる部分。収穫のタイミングを誤ると糖度や香りが落ち、仕上がりに大きく影響します。

豆知識:収穫されたピニャは30〜80kgにもなり、一部の高級テキーラでは100kg以上のピニャが使われることもあります。

3. アガベの加熱と搾汁|風味を引き出す大切な工程

収穫されたピニャは、オーブンやオートクラベ(高圧釜)で加熱処理されます。加熱によって、アガベに含まれるイヌリンという多糖類が分解され、甘く香ばしい糖分に変化します。

その後、柔らかくなったピニャを砕き、圧搾してジュース(アガベジュース)を抽出。このジュースが、発酵・蒸留されてテキーラの原酒になるのです。

ちなみに、加熱方法にも違いがあり、伝統的な「石造りのオーブン(ホルノ)」を使うか、近代的な「オートクラベ」を使うかで風味が変わります。

伝統的な石窯(ホルノ)

  • ゆっくりと2〜3日間加熱
  • 香ばしさと複雑な風味が特徴
  • 小規模生産に多い

近代的なオートクラベ

  • 短時間(12〜24時間)で加熱
  • クリーンでフレッシュな風味
  • 大量生産に向いている

4. 発酵|自然の力が生み出すアルコール

搾汁されたアガベジュースは、発酵タンクに移されます。タンク内で酵母が糖分を分解し、アルコールと風味成分を生成します。

発酵期間は3〜7日ほど。酵母には、自然酵母を使う伝統製法と、培養酵母を用いた管理製法があります。自然酵母を使うと、野生酵母由来の複雑な香りや味わいが生まれます。

発酵は温度や時間の管理が極めて重要で、この段階でテキーラの香りや味の基盤が形成されます。

5. 蒸留|テキーラの輪郭を決める2段階工程

発酵を終えた液体は「もろみ」と呼ばれ、次に蒸留工程へ。通常、テキーラは2回蒸留されます。

  • 第1蒸留(デスティラシオン・プリメーラ)で粗いアルコールを抽出
  • 第2蒸留(デスティラシオン・セグンダ)で純度を高め、雑味を除去

この蒸留には銅製ポットスチルやステンレスタンクが使用されます。銅製はまろやかな味を生み、ステンレスはシャープでクリアな風味を作ります。

蒸留後の液体は「ブランコ(熟成なしのテキーラ)」としてすぐ出荷されるか、次の「熟成工程」へと進みます。

6. 熟成|味と香りを深めるバレルの魔法

テキーラの味と香りを豊かにするのが熟成工程です。蒸留後の原酒はオーク樽に移され、以下のような分類で熟成されます。

熟成種別熟成期間特徴
ブランコ0〜2ヶ月フレッシュでスパイシー
レポサド2〜12ヶ月バニラやキャラメルの香り
アネホ1〜3年深いコクと滑らかな口当たり
エクストラ・アネホ3年以上複雑でリッチな風味

熟成樽は主にアメリカンオークやフレンチオークが使われ、以前ウイスキーやワインに使われた中古樽を使うことも多いです。

テキーラの熟成樽
テキーラ蒸留所の熟成庫。樽の中でゆっくりと風味が深まっていく

7. 製造工程によるテキーラの種類の違い

製造工程のどの段階で変化を加えるかによって、テキーラには以下のような違いが生まれます:

  • アガベ100%使用か、ミクスト(砂糖等加える)か
  • 加熱法(石窯 or 高圧釜)
  • 発酵タンク(木樽 or ステンレス)
  • 蒸留器(銅製 or ステンレス製)
  • 熟成樽の種類や期間

これらすべてがテキーラの味・香り・色・価格に直結します。

製法伝統的製法近代的製法
アガベ加熱石窯(ホルノ)オートクラベ(高圧釜)
アガベ粉砕石臼(タオナ)機械粉砕機
発酵木製発酵槽+自然酵母ステンレス槽+培養酵母
蒸留銅製ポットスチルステンレス製連続式蒸留器

8. テキーラ工場を実際に訪れた感想

筆者は以前、ハリスコ州のテキーラ蒸留所を訪問しました。ヒマドールが手作業でアガベを収穫する様子、石造りのオーブンから立ち上る甘い香り、そして静かに熟成される樽の部屋。五感で「命が宿った酒造り」を感じました。

テキーラは工業的に作られるものではなく、「職人の技と自然の恵みの融合」であることを実感しました。

蒸留所内の空気は甘く香ばしく、ピニャを焼く石窯の前に立つと、まるでパンを焼いているような香りが漂います。熟成庫ではオークとバニラの香りが混ざり合い、訪問者を魅了します。これらの香りを記憶に刻んでおくと、グラスの中のテキーラをより深く理解できるようになります。

9. まとめ|製造工程を知るとテキーラはもっと美味しい

テキーラは、「アガベの収穫」から始まり「加熱・搾汁→発酵→蒸留→熟成」という多段階の工程を経て完成する、職人芸が光る蒸留酒です。

この製造工程を理解すればするほど、グラスの中にある一杯がいかに手間と情熱の結晶かがわかります。飲むたびに、作り手の想いに想像を巡らせてみてください。

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